早稲田鶴巻町「716」

早稻田鶴巻町「716」ヨーコさん登場!

「いらっしゃいませ!こんばんわ~」と、ちょっと甲高くも可愛らしい声で、カウンター越しに客を名前で迎えるのは、この店の店主である鈴木陽子さん(33才)。2013年、27才の時に居抜き物件でオープンした「seasonal bar Nanairo (ナナイロ)」はこの夏、早6周年を迎える。6年という歳月で確立された、地元に根付く止まり木的なこの店の魅力とは?

716オーナーの鈴木陽子さん

営業は18時から翌1時、夜な夜な近所の常連客がふらりと店を訪れてくる。この店のある新宿区鶴巻町は、早稲田駅と江戸川橋駅の中間くらいに位置し、いわゆる2等~3等立地と呼ばれる場所だ。それゆえか、客のほとんどが常連客だからこそ、来店した客の名前や素性、酒の酔い方まで熟知しているといったところだ。
常連の客層は、店の近くにある早稲田大学に通う学生さんもいれば、近所に住む会社員の方々、仕事上がりに一杯引っ掛けにくる周辺の飲食店で働く人などさまざま。BARに付き物の「チャージ」が付かないこの店は、まさに気軽に一杯だけ飲みに毎晩でも通えるのが魅力のようだ。実際、ふらっとホロ酔いで入ってきた常連さんが、「ヨーコちゃん焼酎!」と一杯頼み、クイっと煽ってスッと帰る光景も珍しくない。お勘定は、1000円出してお釣りが来る、まさに明朗会計。ちょい飲みOKなのだ。

オーナー兼ママさん兼看板娘!?

訪れたこの日は、ウイスキーのボトルをキープする常連であろうご夫婦が隣の席に座り、「ヨーコママ」と他愛のない世間話をしていた。目と目が合い、奥様から「ご近所さん?」と声をかけられ、そこから意気投合。すると旦那さん、そのさらに隣のお客さんも会話に参加し、さらにその隣と連鎖していき、カウンター越しの「ヨーコママ」を中心に一体感が生まれる。こうした、地元常連客でガッチリ固められた店は、客によっては好き嫌いが分かれるケースも多いはず。しかしながら、この店はこのスタイルで早6年。しっかりとそれを理解しこの店と「ヨーコママ」を慕う客で成り立っているようだ。

1時の閉店とともに、残った常連客と近所の飲食店に繰り出すことも多いという。先程、この店の客だった方が、今度は店側の人間としてカウンターの中で料理を振る舞う側にいる。「ここのお料理めっちゃ美味しいんですよ~!」と、常連客の店で、常連客と舌鼓を打つ。ここ鶴巻町という街の一角で構成された小さな小さなコミュニティー。わざわざ行く店ではなく、必然で行く店。そんな気がする素敵な止まり木的なお店です。

取材協力

seasonal bar Nanairo (ナナイロ)

東京都新宿区早稲田鶴巻町569 根本ビル1F

☎080-4295-0716

「日本外食新聞」ソトスマ2019年6月15号掲載