
東京でのサラリーマン生活を捨てて、放浪人生を歩み始めた。行き着いた先は、瀬戸内海を有する笠岡という小さな田舎町。駅前で店を営む五十路手前の居酒屋オヤジの愚痴や小言を綴ります。
入るときにはまず、本当の姿は見せないと思え
今時バイトの募集かけたところで、ロクに集まってくれないような世の中。ましてや専門的な仕事をしてくれる人なら尚のこと。 シェフや板前、ホールなら店長とかね。要するに、店作りに重要なポジションを任せたいと思えるような人材を得ることが、本当に難しくなってきている。
ネットや媒体から応募してくるフリー状態から、人を見極めるのって本当に難しいことだと思う。気を付けなアカンのは、フリーの人材ってのは、その時点では無職であることが多いと思うんだよね。つまり、どこかを辞めて面接に来ているわけよ。前の職場で何か問題があったんじゃないかと疑ってかかった方がいいとは思う。
思うに飲食店で人を選ぶ時、「一緒に店を作っていく覚悟があるかどうか」だと思うんだよね。一番気を付けなアカンことは、目先の金を得たいがために、自身を誇大表現する奴が多いんじゃないかってこと。平たく言えば嘘つきに気をつけろってことなんだよね。
ただ、ややこしいというか、めんどくせ~というか、「ウソツキ」ほど口がうまいんだよね。それも、頭で考えた嘘なら分かりやすいけれども、身体から嘘つく奴ってなかなか見抜けないもんなんやなって思う。 だからできるだけ素性の分かっている人材を採りたいって思うわけよ。なかなかムズいけど。
仕事に対する意欲の部分って、スキルの問題ではないんじゃないって思うことが多いわけよ。 なのにそういうのって「自分色々デキます」とか云うじゃん? アピール上手いんだよね(笑)
料理人の仕事なんかさ。ある程度「思い」がないとやれないわけでしょ? 仕入れから仕込みから清掃から、調理そのものからサーブからお見送りが終わるまで。「人を思う」が人一倍強くないとやれない仕事だと思うわけよ。 それって、採用してから働き出すまで、下手したら働き出してからしばらくしても、なかなかわからないもんなんよ。見極め難しいよね。特に身体でウソつくタイプの人間だったらね。
先日、「やれるというからから採用してみたら、まずやれてねえのよ!」って話があってね。 聞いてみたら、仕入れに行く時間に起きて来ないってさ。 素材見て、料理に対するイマジネーションを高めようって意欲がないって、判断せざるを得ないでしょ? だいたいそう思わせてくれるような奴は、調理法やポーションとかの提案なんか皆無だし、厨房やホールの清掃はいい加減。バイトへの面倒見も悪いしね。簡単に言えば愛される店作りに必要ないんだよね。
飲食店って大きく分けて、チェーン店と個人店に分かれると思うんだけどさ。例えばオーナーシェフの店なんかは個人店だよね。そういう店は、「シェフの個性を際立たせるための補助」が主な仕事になる。それってイチイチ教えてもらわなきゃわからないじゃだめなのよ。自分で何をすればいいのかは常に自分の頭で考えてやっていかないとダメ。
そしてそれを追求していくと、どんどん仕事量って増えていくもんだと思う。仕事中にSNSなんかやって遊んでいる暇なんかないし、休みの日にだってやるべきことが気になっちゃうような「料理バカ」になっちゃう。求める人材像ってそんな感じかな?
飲食店って良い意味で「馬鹿」でないとやれないと思うのよね。小賢しくカッコ満点、中身0点じゃやれないのよ。お客さんからも見抜かれちゃう。「再来店したい」と思ってもらえるかどうかですぐ結果が出ちゃうことだから。で、結果「採用するんじゃなかった」と思われてしまう。つまり、「いらないよ」って、なっちまうのよ。「働き方改革」とか口から出ちゃうような人は、はっきり言ってイラネーのよ。
意欲を持って働いている姿ってのはオーナーもちゃんと見てるものだからさ。 独立するだのなんだの言い出した時にも、オーナーはちゃんと協力してくれるはずだよ。で、そんな気持ちにさせてくれるような人と出会いたいものだよね。だから出来れば媒体からのフリー応募じゃない方がいいんだけどね。
Profile ねぶと屋店主 佐藤マコト

岡山県笠岡市にて魚居酒屋「ねぶと屋」を2010年より運営。2000年代にはテンポスバスターズに在籍しテキトーな営業スタイルで周囲より悪評を買う。広島でチェーン立ち上げに関わったり岡山の魚市場でブローカーみたいなことしたり。色んなとこ覗いて言うことだけはいっちょ前になった居酒屋オヤジ