
東京でのサラリーマン生活を捨てて、放浪人生を歩み始めた。行き着いた先は、瀬戸内海を有する笠岡という小さな田舎町。駅前で店を営む五十路手前の居酒屋オヤジの愚痴や小言を綴ります。
テイクアウトじゃ所詮、中食には勝てない
オレの店でも、テイクアウト用に開発したメニューがあるけどさ、やっぱり、その場で召し上がっていただくためのモノがほとんどなんだよね。ほら、ライブ感大事にしてる居酒屋だからさ(笑)

テイクアウトの定番といえば牛丼、カレー、寿司、焼鳥といったところかな。それらと比較して、オレのとこで普段やってるのは「出来立て」っていうのもさることながら、出来るのを待つ時間も料理のうち…。ってことになるんかね。お酒と会話が何よりのごちそう…ってよ。
前述のテイクアウトの定番もさ、本当はお店で「出来立て」を食べた方がうまいよね。ケンタなんか持って帰ったらベシャベシャで肉臭いけど、揚げたてのそれは、立ち上るスパイスの香りや、得も言われぬ食感に感動した! てな経験もあるんじゃね?
逆にテイクアウトでしか味わえないモノと言ったら…。それは、家族のみんなで味わうことができるってことじゃないかな。その点では、お寿司の折り詰めなんかがいいね。子供たちの食いつきはハンパないし。親父の威厳保てちゃったりしてさ。
そこ行くと、居酒屋なんて所詮は、家族の皆さんから「父ちゃんだけうまいものどっかで食ってきたんだろ!」的な見方をされるような「ソンザイ」なのかもな。父ちゃんも「お、おう。飯は食ってきたぞ?」と、居酒屋に寄り道してきたことをハギレ悪く、半分逃げるように報告するのが精一杯だべよ(笑)
晩ごはん用意してるはずなのに、「帰る途中で食ってきたからいらない…」とか言っちまうのが、昨今の夫婦不仲の原因にもなってるとか、なってねぇとか?
ってことは、今のようなご時世でなかったとしてもさ、そもそも居酒屋なんてものはこっそりコソコソしながら行くとこ。宿命だから仕方ないよね。
ウチの店「ねぶと屋』は、これからも日陰を歩いてまいります。皆様もどうぞ、少々の後ろめたさを秘めてお越しくださいね。

「日本外食新聞」ソトスマ通巻60号 2020年6月5号掲載
Profile ねぶと屋店主 佐藤マコト

岡山県笠岡市にて魚居酒屋「ねぶと屋」を2010年より運営。2000年代にはテンポスバスターズに在籍しテキトーな営業スタイルで周囲より悪評を買う。広島でチェーン立ち上げに関わったり岡山の魚市場でブローカーみたいなことしたり。色んなとこ覗いて言うことだけはいっちょ前になった居酒屋オヤジ